塩野 七生: ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) 新潮文庫
読んだら止まらなくなる、歴史自体の面白さと、著者の軽快な筆の進み方。
「ローマ人の物語」文庫版、第1・2巻は「ローマは一日にしてならず」、建国の王ロムルスの時代から、7代続く王政、つづく共和制のローマの発展が描かれる。歴史と同時にその時代の文化や背景も詳しく描かれていて、今までほとんど知らないでいた世界が一気に、身近に感じられるようになる事は必至。
この1、2巻では国家が主役で、業績を上げた人物は多いけれど、数ページで何十年も時間が経ってしまう。だが決して単調な歴史の記述では終わらないため、楽しんで読むことができる。もともと歴史は苦手科目だったのだが、この本に出会って暗記とは関わりの無い歴史の楽しみを知ることが出来た。昔から歴史の教科書を読むことは嫌いじゃなかったのだが、そこに並んでいるデータを記憶しようとしても全く成果が上がらなかったので、科目としての歴史は苦手科目だし、それは今も変わらない。
歴史の本は覚えるより、読むに限る。
3巻ではいよいよ、カルタゴの名将ハンニバルが登場する。
宮部 みゆき: 火車 (新潮文庫)
何気なく手にとった本を読んで、自分の興味・関心をそれまでいささかも惹かなかった世界に引きずり込まれることがある。この本の場合は、前半部で重大な役割を果たす戸籍、民法とそれらに関わる諸手続きが、こんなにも面白く、重大なものだと気づかせてくれた。
社会に出た者は、経済観念をある程度備えていれば、いくらでも集ってくる吸血蝙蝠に対処せねばならなくなっていることを遅かれ早かれ悟ることになる。そして隙があったり、ささやかな夢を叶えるための地道なはずの計画が崩れたりすれば、簡単に転落してゆく。
主人公が追う、姿を見せないヒロインは、非常に有能であり、大変な精神力の持ち主である。だが、その原動力は、この世界が時として積極的に示す、弱者に対する冷酷さへの、恐怖、そのものに他ならない。彼女の行為が許されないとしても、多くの読者は同情するだろう。
謎解きでは、読者は翻弄される一方だと思うが、次第に全貌を見せる物語からは目を離せなくなることは、保証する。
宮城谷 昌光: 侠骨記 (講談社文庫)
中国の小説の重要な要素、侠骨を軸に展開される4編の作品集。主人公に任侠の世界の人が登場しないのが、味噌。読み終わって「ああ、あの話はこの人か」なんて思ったりする仕掛けになっている。(自分だけ?)
で、どこが侠骨なんだ? と思う話も混ざっているので、解説を引用すると、侠骨とは、「わが身を惜しまず、人の難儀を救いに駆けつけ、生死の境を渡っても、才能を自慢せず、ほどこした恩を誇るのを恥とする者」の気骨・人格をいうらしい。
そう思って読めば納得のいく話ばかり。本当にこんな人いたの? とは、思うが、一応、学ぶものはあるであろう。
デイヴィッド ブリン: ポストマン
ずっと昔気になったSF小説が、なぜかケビン・コスナー主演で映画化されて、邦訳版がリメイクされて古本屋に並んでいたから、つい買ってしまった。昔は「こんないい加減なストーリーは読むに耐えない」なんて理由で買わなかったんだが、最近はドラマ志向になって人間が軽くなったのか、苦労なしにこういう本が読める。しかし久々に読んだSFが、西部劇だったとは、なんていうオチだ。
毎度だがアイデアが一杯で、書いている途中はきっと楽しかっただろうなと思わせてくれる本。しかしこれも毎度だが、最初こそ読者をグイグイと世界に引き込んでくれるが、クライマックスが全然もりあがらないね。まあ、感じ方は読む人次第だろう。